上肢・手の疾患の対応いたします
上肢や手の怪我や病気の治療を行います。
具体的には、ばね指、ドケルバン病、絞扼性神経障害、骨折や脱臼、腱断裂、靭帯損傷、腱鞘炎、指や手の変形、変形性関節症、リウマチによる手の障害、硬くなって動かない(拘縮)などに対応いたします。
上肢・手の主な疾患
ばね指
ばね指は、指が屈伸するときに引っかかりや痛みを感じる疾患で、手の指の屈筋腱(指を曲げる筋肉の腱)が腱鞘と呼ばれるトンネルの中で炎症を起こし、滑らかに動かなくなることで発生します。
腱が腫れたり厚くなったりすることによって、腱鞘の中でスムーズに動かなくなるため、指が曲がったままロックされることもあります。
主な症状には、指を曲げたり伸ばしたりする際にクリック音やポップ音が聞こえる、痛みやこわばりが生じる、指がロックされた状態から突然に跳ね戻るなどがあり、特に朝起きたときや、手を長時間使った後に症状が悪化することが多く、指の付け根に腫れやしこりが感じられることもあります。
ばね指の原因は明確には判明していませんが、反復動作や手の酷使、糖尿病や関節リウマチなどの基礎疾患がリスクを高めるとされており、40歳以上の女性や手作業が多い職業の人々に多く見られます。
治療方法は、症状の重さや原因に応じて異なりますが、軽度のばね指の場合、手を安静に保ち、アイシングやストレッチ、非ステロイド性抗炎症薬などを用いた保存的治療が効果的です。
中程度から重度のばね指の場合、ステロイド注射によって炎症を抑える治療があり、短期間での症状改善が期待できますが、再発のリスクもあります。
保存的治療やステロイド注射で改善しない場合や症状が非常に重い場合、手術によって腱鞘を切開し、腱の通り道を広げる治療が行われます。その際は手術が可能な医療機関を紹介させていただきます。
ドケルバン病
ドケルバン病は、手首の親指側に生じる腱鞘炎の一種で、親指を動かす際に痛みや不快感を伴う疾患です。手首の腱鞘という腱の通り道が炎症を起こし、腫れや狭窄が生じることで、親指を動かす際に痛みが発生します。
親指を使う頻度の高い動作が多い人々、例えば赤ちゃんを抱っこすることが多い親や、ゴルフやテニスなどのスポーツを行う人、長時間パソコン作業をする人々に多く見られます。
手首の親指側に痛みを感じることが多く、この痛みは親指を動かす際や物をつかむときに増し、痛みがひどい場合、手首に腫れが生じることもあります。
親指を動かすときに引っかかりを感じたり、動きが制限されたりすることがあります。手首の腱鞘部分にしこりが感じられることもあり、これが痛みを引き起こす原因となることがあります。
原因は明確に判明していませんが、親指を頻繁に使用する反復動作や手首の酷使が主な原因とされており、手首や親指に外傷を受けた後に発症することもあります。
関節リウマチなどの炎症性疾患がリスクを高めることも知られています。
治療方法としては、手首の安静とアイシングを行うことで炎症を軽減することは前提ですが、親指と手首を固定する装具を使用し、動きを制限することで症状が緩和するケースもあります。
非ステロイド性抗炎症薬で痛みや炎症を軽減する方法や理学療法を通じて、ストレッチやエクササイズを行い、腱や腱鞘の柔軟性を改善することが重要です。
症状が重度の場合、ステロイド注射によって炎症を抑える治療があります。
手根管症候群
手根管症候群は、手首の手根管という狭い管の中で正中神経が圧迫されることで発生する障害で、この管は、手首の骨と靭帯によって構成されており、指を動かす腱や正中神経が通っています。
手根管内で正中神経が圧迫されると、手や指に痛みやしびれ、筋力低下が生じます。
主な症状としては、親指、人差し指、中指、および薬指の一部にかけてのしびれや痛みで、特に夜間や朝に悪化しやすく、手を振ることで一時的に軽減することがありますが、手の感覚が鈍くなったり、物をつかみにくくなることもあります。
症状が進行することで、手の筋肉が萎縮し、力が入らなくなることもあります。
手根管症候群の原因は多岐にわたり、長時間の手首の酷使や反復動作、手首の外傷、妊娠、糖尿病、甲状腺機能低下症、関節リウマチなどがリスク要因となります。
傾向としては女性は男性よりも手根管症候群になりやすく、これは、女性の手首が一般的に男性よりも細く、手根管が狭いためと考えられています。
治療方法としては、軽度の場合、手首を安静に保ち、サポート装具を使用することで症状の改善が期待できますが、非ステロイド性抗炎症薬を使用して、痛みや炎症を軽減することも一般的です。
症状が重い場合や保存的治療で改善しない場合、最終的には手術によって手根管を広げる治療が必要になることもあります。その際は手術が可能な医療機関を紹介させていただきます。
肘部管症候群
肘部管症候群は、肘の内側を通る『尺骨神経』が圧迫されることで発生する神経障害です。
尺骨神経は、手の小指側に感覚を伝え、いくつかの小筋肉を支配する重要な神経であり、肘の内側にある肘部管という狭い通路を通ります。
この神経が肘部管内で圧迫されると、手や前腕に痛みやしびれ、筋力低下などの症状が現れます。
主な症状として、小指や薬指のしびれや痛みが挙げられますが、特に、肘を曲げた状態が長く続いた後や、夜間に症状が悪化することが多く、手の巧緻性が低下し、細かい作業が困難になることもあります。
症状が進行すると、手の筋肉が萎縮し、握力が低下することがあります。特に小指側の筋肉が萎縮しやすく、手の見た目が変わるケースもあります。
原因は多岐にわたり、長時間の肘の曲げ伸ばしや圧迫、反復動作、肘の外傷、骨の変形、関節炎などがリスク要因となり、加えて糖尿病や甲状腺機能低下症などの基礎疾患がある場合、神経の圧迫リスクが高まることがあります。職業や日常生活で肘を多用する人々、例えばデスクワークで肘を長時間曲げる姿勢をとる人や、運転や楽器演奏など特定の動作を繰り返す人に多く見られます。
治療方法は、軽度の場合、肘を安静とサポート装具を使用することで症状の改善が期待でき、夜間に肘を伸ばした状態で固定することで、症状が軽減することがあります。
非ステロイド性抗炎症薬を使用して、痛みや炎症を軽減することも一般的です。
症状が重い場合や保存的治療で改善しない場合、最終的には手術によって肘部管を広げる治療が必要になることもあります。その際は手術が可能な医療機関を紹介させていただきます。
ヘバーデン結節
ヘバーデン結節は、手指の末端関節(遠位指節間関節、DIP関節)に生じる骨のこぶで、主に変形性関節症の一形態として現れます。
この状態は、指の関節に慢性的な炎症と軟骨の摩耗が起こることで、骨が過剰に形成され、関節が変形することによって発生します。ヘバーデン結節は特に中高年の女性に多く見られます。
初期症状として、指の関節に軽い痛みやこわばりが生じることがあり、症状が進行すると、関節が腫れて固くなり、骨のこぶが形成されることで指の形が変わります。
この骨のこぶは硬く、痛みを伴うこともあり、見た目にも目立ちます。指の関節の動きが制限され、細かい作業が困難になることもあります。
原因は主に遺伝的要因と考えられており、家族歴がある場合、発症リスクが高まります。
長年にわたる手指の使用や関節の負担も一因とされており、職業的に手を多用する人や、指に負担がかかる動作を繰り返す人に発症しやすく、女性の場合は、ホルモンの変化が影響している可能性も指摘されています。
完全な治癒が難しく、症状の軽減と生活の質の向上を目指し、痛みやこわばりを和らげることを目標とします。
ガングリオン
ガングリオンは、関節や腱鞘に生じる良性の嚢胞で、ゼリー状の液体が溜まった腫瘤です。最も一般的に見られる場所は手首や手の甲、足首ですが、身体の他の部位にも発生することがあります。
一般的に痛みを伴わないことが多いですが、神経や周囲の組織を圧迫することで痛みや不快感を引き起こすことがあります。
ガングリオンの形成原因は完全には明らかになっておらず、関節や腱鞘の繰り返しの動作や過度の使用が関与していると考えられています。
関節や腱鞘の周囲の組織が弱くなり、その結果、関節液が漏れ出し、嚢胞を形成するという説があります。
治療方法は、ガングリオンが痛みを引き起こすか、日常生活に支障をきたすかどうかによって決まり、無症状の場合は経過観察をすることも多く、自然に消失するケースもあります。
痛みや不快感がある場合、最初の治療法としては、患部を安静にし、過度の使用を避けることが推奨されます。固定具を使用して関節を安定させることも効果的です。
症状が続く場合などは、穿刺して腫瘤内の液体を取り除きます。繰り返し再発し日用生活に支障をきたす場合、手術によるガングリオンの摘出が検討されます。手術はガングリオンとその基部を完全に取り除くことを目的とし、再発のリスクを減少させます。
キーンベック病
キーンベック病は、手首にある月状骨が血行障害によって壊死することにより発生する疾患です。
月状骨は手首の中央に位置し、手の動きや力の伝達に重要な役割を果たします。この骨が血流不足に陥ると、骨組織が死滅し、結果として手首に痛みや機能障害を引き起こします。
キーンベック病の原因はいくつかの要因が考えられており、手首に繰り返し加わるストレスや外傷、血流の供給不全が関与しているとされています。また、月状骨が比較的大きく、血流供給が相対的に不足している場合にもリスクが高まると考えられています。
初期症状としては、手首の中央に鈍い痛みが生じることがあります。腫れやこわばりが見られることもあり、手首の動きが制限されることがあります。
症状が進行すると、月状骨の崩壊や手首の変形が見られるようになり、握力の低下や手首の不安定性が増します。
キーンベック病は進行性の疾患のため、早期に診断し適切な治療を行うことが重要で、適切な管理と治療により、症状の進行を遅らせ、手首の機能を維持することが可能です。
症状の進行度や患者の年齢、活動レベルに応じて治療方法は異なりますが、初期段階では、手首を安静に保ち、固定具を使用することが推奨されます。
症状が進行した場合や保存的治療が効果を示さない場合、外科的治療が検討され、手術の選択肢には、血流を改善するための血管手術や、手首の骨を再構築する手術、月状骨を部分的または全体的に除去する手術などがあります。その際は手術が可能な医療機関を紹介させていただきます。
舟状骨骨折
舟状骨は手の親指側に位置し、手首の動きと安定性に重要な役割を果たしています。
舟状骨骨折は、手首の舟状骨が折れることによって発生する骨折です。特に手をついて転倒した場合やスポーツ中の外傷で発生しやすく、若年層やアスリートに多く見られます。
舟状骨は血流供給が乏しいため、骨折が治りにくい特徴があり、特に舟状骨の中央や近位部(手首側)が骨折した場合、血流不足により骨癒合が遅れることがあります。
適切に治療しない場合、偽関節(骨が治癒しない状態)や手首の変形、関節炎などの長期的な問題を引き起こす可能性があります。
軽度の骨折やずれのない骨折の場合は、手首を固定するためのギプスやスプリントを使用します。
重度の骨折や骨のずれがある場合は、手術が必要となることがあります。
手術では、骨を整復し、ピンやスクリューを用いて固定し、骨の癒合を促進し、再骨折や偽関節のリスクを減少させます。
手術後はリハビリテーションが行われ、手首の機能回復を図ります。リハビリには、手首のストレッチや強化運動が含まれ、徐々に手首の動きと強度を回復させます。
手術が必要な場合は、手術が可能な医療機関を紹介させていただきます。
マレット変形
マレット変形は、指の末端関節(遠位指節間関節、DIP関節)が曲がった状態で固定されることによって生じる変形で、指の末端に急激な外力が加わった際に、腱が断裂したり、骨が骨折することによって発生する疾患です。指の先端に何らかの衝撃や打撲が原因で怒ることが多いです。
指の末端部分が伸ばせなくなり、常に曲がった状態で固定されてしまい、指を伸ばそうとすると痛みがあり、力を入れることができなくなります。
痛みや腫れが初期に見られることがあり、関節に圧痛が伴います。変形が進行すると、指の先端が曲がったまま固定され、見た目にも指の形状が変わることがあります。
主な治療方法として、指の末端関節を適切な位置で固定し、腱や骨が癒合するのをサポートします。
治療が遅れた場合は、関節が固まって動かしにくくなったり、変形が固定されることがあります。そのため早期の治療が重要です。
治療が終了した後も指の柔軟性の回復と関節の動きを正常にするためのリハビリテーションを行います。
マレット変形は、適切な治療を行うことで、多くの場合に正常な指の機能を回復することが可能です。そのため早期の診断と適切な対応が重要です。